温故知新

tamon-wat2004-08-23

写真は喜多方市慶徳町にあります「新宮熊野神社」拝殿、俗に「長床(ながとこ)」と呼ばれている建物です。私の大好きな場所で、四季おりおりの表情をみせてくれる静かで、そう、時間に包まれているような、そんな感覚すら感じさせてくれる場所です。由来はとても古く、「前九年の役」までさかのぼります。源頼義陸奥征伐の武運を祈り勧請したのが始まりとされています。この地に移されたのは寛治3年(1089)、以来900年のながきにわたり、この地に鎮座し続けています。現在の建物は室町時代前期のものらしいのですが、慶長16年の会津地震で倒壊し、慶長19年に倒壊した用材を用いて再建されました。故に鎌倉、室町の様式や経年の美をとどめています。拝殿の前に建つ本殿三社、および宝物殿も見ごたえのあるものです。特に宝物殿には、木造文殊菩薩像などの仏像や銅鐘、銅製鰐口など、明治以前の神仏混交の時代を感じさせてくれる文化財が豊富に拝観できます。
四季おりおりの「長床」は、とても魅力にあふれた場所で、春の桜、夏の深緑、秋の紅葉、冬には雪をかぶった長床が別世界の趣を醸し出します。特に秋の長床は、長床前にある大銀杏の紅葉が素晴らしく、黄色い落葉で一面黄色のカーペットを敷いたようになり、長床の幾百年の古色とあいまって、えもいわれぬ幽玄の世界に誘います。
こんな素晴らしい場所が、私たちの身近にあるしあわせを感じるひとときです。
「長床」で特筆すべきこと。それは、この神社が宗教法人でもなく、地元新宮地区の皆さんの手で代々守られてきたということ。これはすごいことだと思います。現在でも地区の皆さんが交代で管理をなさっています。文化行政の面からは少し寂しいことですが、新宮地区の皆さんに敬意を表するものであります。
昨年、「長床」を訪れた方は約20000人。もっとたくさんの方々にお知りになって頂きたいものです。