会津の初秋

競うように鳴いていた蝉たちもすっかりと姿を消し、代わりに草むらの虫たちが初秋の静けさを聴かせてくれています。「静けさを聴く」私の友人が教えてくれました。西洋の言葉には音はあくまで「音」、「虫の声」であって「虫の音(ね)」という表現は無いとのこと。なるほど私たちの国では「水の音」や「風の音」にも、繊細で微妙な表現がいくつもあって、自然に使い分けをしています。繊細で微妙な表現に恵まれているために、「静けさ」さえも聴くことができ、感じることができるのですね。なんと日本語の素晴らしいことか。美しい表現を常用したいものです。
会津の初秋は静かに始まっています。足元の目立たぬ場所に秋は始まっています。ふと空を見上げれば、そこにも会津の秋がありました。緑なす山々もすっかりと落ち着いていて、青空もすがしく筋雲を浮かべているのです。いい季節をむかえています。
気の早い人は、もう芋煮会の心配をして、今年はどこでやろうかといまから気をもんでいます。そうそう、早稲田では、はや稲刈りが始まりましたよ。早稲種の稲も黄金に染まり、豊穣の秋の到来をしらせています。私は車を止めて、今年初めての稲刈り
を眺めていました。これから順を追って、会津盆地の中は収穫の風景が続きます。決して楽ではない労働の中にも、嬉しい汗と笑顔とを見つけることができるのです。盆地をとりまく山々ではきのこの話題も出始めています。秋本番を迎える高揚した気分があふれているんです。「会津さ寄ってがんしょ。」こころからそうお誘いできる日は、もうすぐそこまで来ています。