ベロタクシーと韃靼蕎麦

喜多方の街に「ベロタクシー」が走るらしいですね。ベロタクシーとはドイツで生まれた人力三輪車のことで、排気ガスを出さない交通手段として各地でもてはやされています。「ベロ」とはラテン語で自転車という意味、既に京都、大阪、広島、東京原宿、沖縄などで愛嬌のある丸まっちっい姿を見かけた方もいらっしゃるのではないでしょうか。このベロタクシーを導入し、実際に走らせるまでには大変なご苦労を重ねてきたことと思われます。そのご努力には敬意を表します。しかしながら、この「ベロタクシー」、果たして喜多方の街に合うものなのでしょうか。喜多方の持つ雰囲気やイメージに合うものなのでしょうか?車体にCMを書き込んだ卵型の球体で原色の乗り物が蔵の街を走るのです。私は「そぐわない」と思っています。長い時間の経過の美しさ、つまり「経年の美」をイメージにした喜多方にとって「そぐわない」と思っているのです。確かに歴史の街京都でも走っています。喜多方でも人目をひく乗り物になって、新しい興味をかきたてられる人も出てくると思います。時速10KMというスピードは新鮮な風景を見せてもくれるでしょう。しかしながら再び言います。
「そぐわない」。むしろ人力車やリキシャの方が、もはや珍しくはないのですがこの街には合っていると思います。
個人的な思いは別にして、走ることが決まったベロタクシーですからなるべく喜多方に合うような乗り物になっていってもらいたいと思います。そこでの提案なんですが、思い切って車体のCMは止め、車内CMだけにすること。車体を原色ではなく、渋めの色を使うこと。(できれば「会津塗り」の風味が望ましい。)運転者のコスチュームを考慮し統一すること。(人力車夫の衣装などはいかがでしょうか。)ご考慮願いたいと思います。
 韃靼蕎麦を売り物にするお蕎麦屋さんができました。このことも驚きです。誰もがご承知のとおり、ここ会津は日本有数の蕎麦の産地です。ここかしこに白い蕎麦の花が咲いていたのはついこの間でした。もうすぐあの新蕎麦を楽しめる季節がやってきます。しかしながらそのお蕎麦屋さんの売りは「北海道産の韃靼蕎麦」だそうです。どんな方がお始めになったのかは存知ませんが、よりによって蕎麦を売り物にしているここ会津の地で「北海道産」を売り物にする気持ちが理解できません。韃靼蕎麦にはルチンなど生活習慣病に効果があるとされる成分が多く含まれています。中国では明の時代から漢方薬のひとつとして用いられてもきました。「苦蕎麦」と呼ばれていましたね。日本で通常食べられているのは「甘蕎麦」といわれる種類です。よって、同じ蕎麦であっても種類の違う蕎麦ではありますが、いかんせん蕎麦の産地での話しです。韃靼蕎麦の良さを理解した上で、ここ会津での栽培を試行してみるとかの、今一歩の踏み込みがあったのかなとの思いがするわけです。寒冷地で、かつ標高の高さも要求されると聞いています。裏磐梯あたりではもってこいの蕎麦になるのではないでしょうか。やはり提案なのですが、開店を機会に「会津韃靼蕎麦栽培研究会」を立ち上げ、賛同者をつのって欲しいと思っています。韃靼蕎麦に賭けた開店でしょうから是非にでも会津にも栽培の根を張ってはいただけないでしょうか。この機会に私も韃靼蕎麦の栽培について勉強してみようと思います。
 「ベロタクシー」と「韃靼蕎麦」。このふたつについて思うこと。それは郷土について十分に「こだわっている」かどうかということなんです。自分たちの住む郷土の財産を十分に理解して、かつこだわった結果としてのベロタクシーの導入であり、韃靼蕎麦のお店の開店であれば結構だと思います。「あそこで成功しているから」「この辺ではどこもやってないから」「新鮮だから」といって前へ進むことは危険です。
既に築き上げてきた喜多方の、会津のブランドとイメージがあります。新しいものの導入にあたっては執拗なくらいの「こだわり」をもってあたっていただきたいと、こころから願っています。私たちの街には新幹線の駅はそぐわないとの意思を表明した長野県小諸市。赤い電話ボックスを復活させたロンドン市、自分たちの財産はいかなるものかということを真剣に考慮した結果だと思います。願わくは、そんなこだわりを持った喜多方市民が多いこと、均質化された街になることをいさぎよしとしない市民の多いこと、いいものをこの地に合わせて導入しようとする市民が多いことを。
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