朝曇り

tamon-wat2005-08-05

ヒグラシの合唱に起こされて窓外を眺めますと、空はうすぼんやりと曇っている様子。
「おっ、今日はあまり暑くならないかな?」
ところが仕事先に着く頃には、空はもうすっかりと青い空になっていて、しっかりとした暑さが私を焼き上げようとしているかのよう。
こんな夏の朝のお天気を「朝曇り」というそうですね。
前日の強い熱射で空に昇っていた水蒸気が、夜気に冷やされて、早朝には雲がかかったようになっている。
日中の気温がどんどんと上がってくるとすぐ消える運命にあって、これは夏の朝特有のお天気なのだそうです。
まだ盛夏は始まったばかりなので、この朝曇りにも見事にだまされてしまいました。
恋人坂からの朝曇りの散居風景はなかなか好い景色で、会津の魅力のひとつだなあといつも見入ってしまうのです。


喜多方の街中は東北に似合わず暑いのです。
34度なんて信じられない温度にまで上昇しました。
そんな暑さのなかでも、市内では連日の夏祭りの準備や、後片付けに大勢の人が汗を流していました。
2,3日とお諏訪様の夏祭りがあってだいぶ賑わいました。
4日の午前中は前夜の後遺症で気分の悪そうな、青い顔をしてスタジオ入りしてくるスタッフもチラホラ。
おいおい、喜多方の夏はまだ始まったばかりだよ。とこころの中で忠告をしておきましたが、はてさて届いたかどうか・・・


暑い暑いと言って過ごすのもあと二週間ですね。
お盆が過ぎてしまえば、いつものようにすずよかな夜が待っています。
しばし亜熱帯と化した会津の夏本番を楽しむことといたしましょう。
夏にしか味わえない会津の魅力を、あなたはどこに発見するのでしょうか?


写真は「朝曇り」の下で撮った稲穂です。もう70〜80CMに伸びた稲穂がまっすぐに空を目指していました。この暑さを十分に吸収しておいしいお米になってもらいたいですね。



私の好きな恋人坂から雄国山をさらに上っていくと会津喜多方雄国農園があります。
この農園はいわゆる「○○特区」の賜物であり、喜多方が申請、許可された「アグリ特区」事業のひとつとなっています。
雄国の雄大な自然を活かし、多くの人に農業を楽しんでいただきたいとの趣旨でオープンしました。
無農薬の安心野菜をつくりたい、昔の味のトマトが欲しい、休日には土いじりがしたい、動物と触れ合いたい、蕎麦を打ってみたい、そんなさまざまな希望をかなえるべく雄国の中腹にこの農園はあります。
先日、行ってみたところ、恋人坂とはまるで違った大迫力の風景と、お蕎麦のうまさにおどろいてしまいました。
私は蕎麦を二枚も食べてしまったのです。
何?たった二枚か?と怪訝に思わないでください。都会の基準と喜多方の基準とでは雲泥の差があります。
雄国の高みから見る雄大会津の景色を、どうしたらみなさんに伝えることができるでしょうか。
雲がはれて、盆地の向こうに姿を現すであろう飯豊の山塊を想像しながら、再訪を決心していました。
喜多方の魅力をまたひとつ発見しました。


  会津喜多方雄国農園
    喜多方市熊倉雄国字獅子沢577
    0241−24−3101
        営業時間  11:00〜20:00




  • 喫茶閑話

講談社週刊現代がエッセイを募集していた「京都・奈良、私の散歩道」に入賞しました。
この春4月、友人から「おい、お前向きのエッセイ募集があるぞ」と教えられ、一晩で書き上げたエッセイが思わぬ賞をいただきました。
ご褒美は京都・奈良への旅行です。
暑さが一段落したら、またあの路地に立ってみたいと思っています。



斑鳩の路地」


喧騒の中、あしばやに法隆寺の参拝を済ませると私の足は西里の集落へ向かった。
上々の天気である。
もうすぐ立夏
頭上にはもう初夏の青空が広がっている。
わずかな距離を歩いただけで静寂が支配する。
私は土塀の路地を記憶をたどりながら歩いていく。
西里。
この斑鳩の塊村は、もともとは法隆寺の修繕・維持管理に従事した人々が住んだという。
平安の遷都と共に大半の人は京に移り、千年の時間が集落の印象を平らかなものに風化させていく。
迷路のように細く縫った路地が続いている。
土塀と漆喰の剥げ落ちた民家の壁にはさまれて、曲がりくねった路地が続いている。
掘割の水がやわらかい音をたてている。土塀越に柿の新芽が萌えている。
角を曲がると見覚えのある場所。
いくぶんか広がりのあるこの径は、あの日、花柄のワンピースの君と手をつないで歩いた径。
将来に何の不安も持たなかった私たちの歩いた径。
私はさらに歩みを緩め、時を越えようとしていた。
君の姿を追い求めていた。
あの声を探そうとしていた。
違った人生に想いをめぐらしていたのだ。
ふと、
顔を上げると、君がいた。
花柄のワンピース姿の君がいた。変わらぬ笑顔の君がいた。
私と、私の中の君と歩く土塀の路地。
しばしの時間旅行。
生き様を確かめる径。
やがて、
思索の路地を抜けると私は大きくため息をついた。
そして、
再び顔を上げると、大和屋根の向こうに見える五重塔をめざして、ちからを込めて歩きだした。