二百十日

tamon-wat2005-09-01

今日9月1日は二百十日防災の日でした。
昨年とはうってかわって台風の少ない年になっていますが、これからも少ないとは断言できないのがお天気です。アメリカでのハリケーンカトリーナ」の惨状も生々しく伝わり、自然災害へのこころづもりをあらためて思う日となりました。
自然に逆らうことなく、自然と調和して生きるのが私たちの伝統でした。生産性とか利便性とかに捕らわれるあまり、大事なことを忘れないようにしたいものです。


  • ゲーテの詩朗読コンテスト」に出場して

先日の8月27日(土)、東京千駄ヶ谷の津田ホールにて開催された「第24回ゲーテの詩朗読コンテスト」に出場して参りました。
全国で400人近くの応募者があり、二回の録音選考の結果25人が選ばれ、上記のとおり本戦が開催されたわけです。
幸運にも私もその中の一人として選ばれ、本戦出場の栄に浴したわけですが、本当に嬉しい出来事でありました。


出場者は15歳の少女から77歳のおばあさんまで、大変な競争を経て選ばれただけに素晴らしい朗読をする方ばかりでした。
特に今年はドイツ年とのことで、ドイツ語原語で朗読をする方が半分以上いらっしゃって、朗読のレベルは特に高いコンテストになったようです。


優勝者は私の直前に朗読をなさった大学院生。
原語で朗読をなさった素敵な女性でした。
出場順が隣ということもあって、控え室で親しく話しをしていた彼女が優勝者として名を呼ばれたとき、私はこころから拍手ができたのです。
つまり、リハーサルの段階から出場者のレベルの高さがわかり、私など優劣を争う段階ではないということ、わかっていたからなのです。


そのとき私が考えていたことは、朗読の技術では既に太刀打ちはできないのは明白、だったらこのコンテストを精一杯楽しもう。
つまりは自分らしい朗読を貫徹しようということでした。


選んだ詩は朗読にして1分足らずの短い詩「夜に思う」でした。
晩年のゲーテが夜空を仰いで、過ぎし日の少年の日々や初恋の彼女の思い出、そして老境に入りつつあるこころの様をうたった詩なのです。
200年前のゲーテの心境を十分に理解できたとは思いませんが、私も50歳を過ぎてゲーテの心境の足元くらいは見えるようになったのかなと思えるふしもありました。
自分らしくということは、いわばゲーテの詩を借りて自分の思いを表現してみようと、そんな朗読ができたらいいなと、そう思っていたわけなのです。


でも500人の人を前に、そんな朗読が果たしてできるのだろうか。
厚顔無恥な私にもかかわらず、心臓が早鐘を打ち続けていました。


「13番 渡邉・・・」と呼ばれました。
ちゃんと歩いています。紹介の言葉も耳に入っています。
観客席の顔も良く見えています。
「これなら大丈夫かな?」
朗読を始めた瞬間に頭のなかが本当にまっしろになりました。
口だけがかってに動いています。
「あれっ、あれっ」と驚いている私がいます。
最初の一節を正しく話せたのかわかりません。
二節目になって、ようやく頭の中の詩の文言を追うことができました。
三節目、思ったような間で離せました。


「あっ、終わった・・・」
静かな安堵感が押し寄せてきます。
直後のインタビューにもてきぱきと答えることができました。
楽屋裏へ戻って椅子に腰をおろすと、どっと安心の汗が出てきました。
もはや勝敗や受賞ということは眼中にありませんでした。
ただただ自分の目指した朗読ができたことに満足をしていたのです。
うまいとか下手だとかを超越して、自分らしく朗読ができた満足なのです。


表彰式、記念撮影と一連の儀式をこころから楽しんでいました。
そして、出場者同士、「ごきげんよう」とか「お元気で・・・」とか声を掛け合って分かれたのです。
恐らくはもう二度と会うことのない人たちです。
かけがえのない一日を、このコンテストでご一緒できたことに感謝しました。


帰りの新幹線のなかで、私はつくづくわが身の幸せを思いました。
50歳を過ぎて、こんな新鮮な緊張感に包まれて、立派なホールの舞台に立ち、私の思いをたくさんの人に聞いていただけた。
まさに、私のこころのアルバムに大事な一ページが加わったのでした。
非日常の興奮を引きずりながら私は何度も満足のため息をついて、車窓に写った私の顔と喜びを分かち合っていました。
そして、
車窓の向こうに広がる暗闇にむかって、私の夏は終わったんだなあと小さくつぶやいていたのです。




  • 写真は今日の恋人坂から見た会津盆地です。

いくぶんか黄色味が濃くなってきました。
蕎麦の花が満開になっていて黄色のたんぼと白い蕎麦のはなと、いいコントラストを描いていました。
久しぶりに飯豊の山塊がうっすらと姿を見せてくれました。残雪の白さも見えました。
もう少しすれば、もっとはっきりとした飯豊山が見えると思います。