番外編 「京都・奈良の旅」 東福寺を歩く

tamon-wat2005-12-14

番外編第二段は、京都を代表する紅葉の名所「東福寺」に足を向けてみました。
東福寺。奈良東大寺興福寺とから一字ずつを頂いてつけられた寺名です。
東山連峰の南の端に位置しますが、交通の便が非常に良いので紅葉の季節には芋洗う観光客でにぎわう名所ですね。
「混む」ということがずっと頭にあったせいか、紅葉時のこの寺に足を向けたこたはありませんでした。
過去何度かの探訪はいずれも青葉の季節でしたが、青葉であってさえも巨大な建造物と調和がとれた美しさで境内で過ごした時間の多さは他所にもひけはとりませんでした。


いよいよ、東福寺の最高の季節に訪れることとなりました。
JR奈良線東福寺駅」(京阪電鉄も同じ駅です。)を出ると、はやくも人の波また波。
午前8時30分だというのにこの人出です。
境内にたどり着くまでに15分くらいはかかったでしょうか。
善男善女が続々と続いていきます。
臥雲橋あたりで、もはや渋滞。この橋から見る通天橋の見事さに誰もが小さな歓声を上げています。日下門から境内に入りました。正面に本堂の大伽藍。
私を圧倒してきます。
大迫力のこの本堂は昭和初期の再建ですが、隣の国宝「三門」に比しても勝るとも劣らない現代建築の精粋を表しています。私の大好きな建築物なのです。
平安末期に創建されたこの巨大な寺院には、その他にも平家六波羅第の遺構を移したとされる六波羅門や室町時代の「東司」(お手洗い)、浴室(蒸し風呂)、わが国最古最大の禅堂など、興味の尽きることはないくらい見るべきものは多いお寺です。


境内を一回りして、ついに錦秋の「通天橋」に向かいました。
ものすごい観光客です。
整理のロープを順に通って、通天橋に通ずる回廊に入りました。
廊下の両側は、もはや真っ赤に染まっています。
楓、楓、楓。
回廊の古色の柱を額縁に、たくさんの楓の木々が微妙に色を変えて華やかな絵画のようです。
たくさんの観光客も気になりません。
私も何枚かこころのシャッターを切っていました。
通天橋です。
洗玉澗と名付けられた渓谷に掛かった「通天橋」。
見渡すかぎりの紅い雲。
なるほど紅い雲の上を、天に向かって歩いているような、そんな気持ちにもなりますね。
緑の季節には味わえない気持ちでした。
橋の中ほどに風景を愛でる観月台のようなふくらみがあります。
通天橋の絶景ポイントです。
ここはもうまさしくトラフィックジャムの中心。
おおきく渦巻いて流れに逆らうわけにはいきません。
定めに身を任せていると、ポッと最前列に出ていました。
絶景です。
なるほど京都随一といわれる景色です。
今年の京都の紅葉は色付きが悪い。いったい誰がいったのでしょう。
眼前には鮮やかな紅の錦絵が広がっていました。
紅の雲の中にわが身を投じてしまいたいような、そんな衝動すら感じていました。
目の前にある夢の世界へ、いつまでも止まっていたい・・・
そんな思いも、背中にかかるたくさんの人の圧力に負けてしまって私はまた定めに身をまかせていました。


満足でした。
続々と押し寄せる観光客の波とすれ違いながら、私は夢のつづきの中にいました。
800年の時間と話をしていたのかもしれません。


駅に着いてハッと我に返りました。
私は「四条京阪」までの切符を手にすると、現実の空間に向かって電車に乗り込みました。



会津に関わりを持つ人の眼で見ると、この東福寺には見逃せない歴史があります。
それは「戊辰戦争」です。
東福寺境内には「戊辰役殉難者慰霊碑」が建っています。
会津人が「戊辰戦争・・・」と見聞きすれば、すなわち敗者としての東軍の立場に立ってのもの。
東福寺境内の「戊辰殉難者・・」にもすぐさま反応してしまいますが、ここの「殉難者」は
残念ながら「西軍」の人々です。
鳥羽伏見の戦いにおいて薩摩・長州を中心とした「西軍」の本陣が置かれたのがここ東福寺です。
ゆえに、会津人はうっちゃりを喰らったように感じてしまうのです。
私も例外ではなく、東福寺は大好きな場所ではありますが、ただこの一点のみ、苦虫をかみつぶしてしまうのです。

やはり、戊辰役の怨念は、会津人や奥羽列藩同盟殉難者、それに西南役の薩摩人とともに、靖国神社に合祀されるまでは続くのだということ、私が断言しておきましょう。



東福寺に限らず、京都では朝が大事です。
早起きをして開門と同時に鑑賞すること。ハイシーズンの鉄則ですぞ!

  • 京都。多聞の美味しいお勧めは・・・

「鍵善義房」の「くずきり」。
寒かろうが暑かろうが、私はいつでもこの店のくずきりをいただきます。
吉野の本葛と黒糖蜜とがかもし出すハーモニー。若かりし頃より京都ではこれと決めています。お店の奥にこぎれいなカフェスタイルの喫茶ができていました。
その昔は四条通りに面したお店の二階で頂いたもんですが、ちょっと洒落ていていいですね。900円。